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超ひきこもり専業主婦の、感情の暴走と妄想

上手くやれてるSの話 -1-

(あの子は何故かわいいままで、あんなに強く居られるんだろう。)

ヒエラルキー上位にいる女の同期を見て、いつになく敗北感と嫉妬を感じていた。

いつもは気にならないその明るさが今日はとてもまぶしい。

 

私は上手くやれてると思う。

この中では上位のなかの真ん中あたりというポジションだろう。実際、上位群のLINEグループに入っている。

今だって一番声の大きいリーダータイプにちょうどいいタイミングで合いの手が入れられたし、笑いのポイントも全体に合っている。今日は同期全員が集まった久しぶりの飲み会なので、少し人見知りもしたが、もう慣れた。大丈夫だ。

きっと仕事中、またあの口うるさい先輩によくわからない細かい指摘をされたから疲れているのだろう。

 

学生の頃は人並みに遊びつつ、ちょっと受験も頑張って、そこそこの大学に入った。

就職活動は厳しい、厳しい、と大学に入学したときから言われていたから、解禁前から情報を集めて少しづつ動き出した。その甲斐あって私の大学にしては、妥当か、少しいいところといえるような会社に入れた。それなりに大きく安定した会社だったので、産休育休制度も整っていそうなところが魅力だった。親も安心したようだった。

 

勉強や仕事も大事だけれど、女だし見た目にもそれなりに気を使った。大学で知り合った優しい彼氏と今も続いている。

おしゃれは自分が楽しいのが一番。とはいえ、なんだかんだ無難でキレイめな雰囲気にするだけで老若男女からチヤホヤされることを覚えてからは、自分の趣味よりもそちらの方を重視している。普通の若い女はシンプルにわかりやすい可愛い格好をしておけばそれだけで綺麗な人扱いされるのだ。それを理解しているのか、それともしていないからか、趣味の服装を貫く同じ年頃の女達を見ると、もったいないという気持ちと、自分を貫けて羨ましいという気持ちの両方を感じる。

 

「仕事やる気なんてないよー。早く辞めたいー。」

あの子が言った。

転職活動してるの?!と悪い子では無いのだが、たまに空気の読めない子が聞いた。

「…してないけど、まじ辞めたくない??」

(あ、糞真面目に返事してる。)

この手の発言は仕事疲れたね、面倒だね、この間なんかさー…って会話の着火点にするだけで流しておけばいいのだ。こんな同期の集まったところで真剣にそんな話するわけがないのだ。

 

「あいつ仕事出来ないくせしてすっごいドヤ顔でアドバイスしてくるの」

「しかもそれ結局間違ってたし!」

みんな明るく冗談っぽく、本気じゃない、盛り上げるためだ、という顔をして、各々の周りの愚痴や悪口を言い出した。でも本気で思っていることは目を見ればわかる。

 

この愚痴合戦が始まると、大人になるってことかな、と毎度思う。

学生の頃は、本人がいない場では、少し人数が多かろうと、表情と言葉両方にのせてストレートに嫌悪を吐き出していた。中学生の頃はそれを発端に無視が始まったり、グループが別れたりした。高校生の頃はそう大きな問題にはならなかったがギクシャクしたり、空気が冷えたり、数ヶ月かけて静かにグループが分断したりした。大学生になると、人が多くクラスというものがないせいもあるが、もう酒のせいにして流すという感じだった。

 

社会人になってからの陰口はほぼ、キャラクターをいじる、という体で吐き出される。今日は同期だけの飲み会なのでターゲットは他部署まで伝わるほど仕事が出来ない人か、各々に付く先輩である。

 

みんな悪口を実に上手く冗談に変換していく。やはり上位層の人ほどその芸が上手い。いつの間にみんなそんな技術を身につけたんだろうか。私が気づいていなかっただけで学生時代からあったのだろうか。

いや、恐らくこれは社会人になってからであろう。

同じ会社の人間同士であるから、陰口を言っていたことが間接的にでも本人やその周りに伝わっては当然仕事がやりづらい。それに皆、”人の悪口を言うやつは信用できない”という決まり事を理解しているのだ。

だがその場のノリ、その場の冗談、そういうキャラ、ということであれば誰も責めない。

 

おかしな話だ。

悪口を言うな、言った人間の評判のほうが下がる。そんな方程式は知れ渡り理解された。だから人を悪く言う人はバカだ。以上、終。陰口禁止。とはならないのだ。

結局本質は何も変わらない。陰口を言い合って、それを酒のつまみにして盛り上がっているだけだ。

 

私はこの上手く冗談めかして悪口を言うことがどうも苦手だ。

そこそこ器用に世渡りしてきたつもりだったが、妙に糞真面目なところがあるようで、悪口をいうと自分が不利になるだけだと学習して以降、上手く黒い感情を吐き出すことが出来なくなくなり、一切悪口を言ったり愚痴を言うことがなくなった。

 

決して愚痴がないわけでも、人を嫌わないわけでもない。むしろ隠さず直接的に言えと言われたら(決して言えないが)この場の誰よりもひどい言葉で嫌いな人を罵ることが出来る気がする。選ぶ言葉がきついようで、過去に人を傷つけたと感じたことが何度かある。だから上手く冗談にし、本気だと悟られない自信が無いのだ。

 

 

 

つづく